「走れメロス」は紀元前のギリシャ時代、ここイタリア南部のシチリア島が舞台です。
この地に伝わる古い伝説が物語のモチーフとなっています。
コンコルディア神殿
平和・調和・和解を象徴するローマの女神の名がつけられたアグリジェント遺跡群の
目玉ともいえる神殿。
紀元前450年頃に建造されたドリス式の神殿で、シチリア島で最も大きく、全面6本
側面13本の柱が現存しており保存状態が良いことで知られています。
ジュノーネ・ラチニア(ヘラ)神殿
神殿の谷の東端にある標高120mの丘の上に立つ遺跡
かって地中海沿岸に栄えた古代ギリシャ。
シチリアにはその時代の遺跡が数多く遺されています。
中でも荘厳な神殿が立ち並ぶとして有名なのがアグリジェントの「神殿の谷」。
1997年には「アグリジェントの遺跡地域」として世界文化遺産に登録されており、
名実ともにシチリアを代表する観光地となっています。
このような紀元前のシチリアを想像しながら「走れメロス」をお読みいただければ
さらにその場面が浮かび上がってくるのではないでしょうか。
主人公メロスは笛を吹き羊を飼って暮らしていました。
ある時、野を越え山を越え十里離れたシラクスの市に来て数日後に控えた
妹の婚礼のための品々を買い集め大路をぶらぶら歩いていました。
メロスにはこの地に住む竹馬の友、石工のセリヌンティウスがいました。
これからその友を訪ねていく途中、なんだか町の様子がいつもと違います。
2年前に来たときは夜でも皆が歌を歌い町は賑やかでした。
今は市全体がひっそりし、やけに寂しい!
一人の老爺から「国王が御自分の妹婿、お世嗣、妹、孫、皇后さま、賢臣の
アレキスさまを次々殺し・・・今日は6人殺されました。
国王は人を信じることができず、臣下の心をもお疑いになり、少し派手な暮らしをしている者には人質一人づつ差し出すように命じ、拒めば十字架刑に処せられます。」
このことを知らされたメロスは激怒し「呆れた王だ!生かしておけぬ!!」と
荷物を背負ったまま、のそのそ王城に入って行った・・・
以上皆さんご存じの太宰治「走れメロス」の短編小説の入口です。
自分が処刑されることになると承知の上で友情を守ったメロスが、
人の心を信じられない王に信頼することの尊さを悟らせる物語。
「走れメロス」は現在中学2年生の定番教材ですが先日我が孫の小学校最後の
学習発表会でこの「走れメロス」が題材となり、6年生の皆さんの素晴らしい
演技を見させていただきました。
幼稚園から一緒だった男の子もすっかり男子になり王様の役で出演、劇の最後には
メロスと竹馬の友のセリヌンティウスと王の三人でしっかり抱き合うシーンで幕が
閉じます。
ちなみに孫は主人公の後半の「メロス」役と劇の最後に全員で合唱するピアノ伴奏
を見事に演じ切り、帰りは市民会館の管理棟ロビー吹き抜けのステンドグラス
佐野ぬいさんの「青の時間」を見下ろしながら「喫茶室baton」にて
好きな物食べ放題の慰労会でした。(もちろん3人分ママのおごりです(*´з`)
父親は勤務先の小学校も学習発表会のため残念ながら我が子の最後の晴れ舞台を
見ることが出来ませんでした😭)
走れメロスに登場する邪知暴虐な国王、ディオニスと全く変わらぬ国王が
今もどこかの国にいることを思うと人間の本質は紀元前から少しも変って
いないように思います。